また蝶の夢を見る

どうせ生まれてくるならヒトじゃなくて、キアゲハが良かった。

卵から無事蝶まで成長できる確率の低さは知っている。

100個から1匹とか2匹とか、それぐらい。

下手したらもっと少ないかもしれない。

でも、ヒトとして五体満足で健康に生まれてくる事に運を使うくらいなら、明るく華やかで元気な印象の美しい翅を持つ、キアゲハとして生まれたかった。

余計な考えに囚われず、ただひたすら本能のまま、懸命に逞しく生きたい。

害虫として駆除されてしまったり、天敵に狙われたり、病気にかかるのを運良く回避して、もりもりニンジンの葉を頬張りたい。

ひらひらと空を舞って、誘われるままに蜜を吸い、花粉を運び、細々と命を繋ぐ。

そんな二ヶ月を生きてみたい。

そんなことを思う。

 

「あんた、もう自分で好きに何処でも行けるんだよ?」と言われた事を思い出す。

私は「できない」と答えた。

やろうと思えばできるのに。

私は何かに囚われている。

誰にも縛られず自由に生きたいと願いながら、自分で自分を縛っている。

動けない。

何処かへ行きたい。

行きたい場所がわからない。

私は何処へ行きたいのだろう。

自分で好きに何処でも行きたい。